2014年8月31日日曜日

スートラの理解のステップ

スートラを勉強する時は、何は無くとも、

まずは手元に、

アシュターディヤーイー・スートラパータ(अष्टाध्यायीसूत्रपाठः [aṣṭādhyāyīsūtrapāṭhaḥ] )

が必要です。

アシュターディヤーイー・スートラパータとは、4000のパーニニスートラが

番号順に載せられている小さな本です。

日本では販売されていないと思います。

2012年に私が編纂したヴァージョンが、自分で言うのも何ですが、

使い易くてお勧めです。

日本でも入手出来るように努めますので、必要な方はご連絡ください。


まず最初に、今から勉強するスートラを、アシュターディヤーイー・スートラパータの中から

番号を頼りに見つけて、スートラの前にチェックマークをいけるのです。


スートラの意味は、以下のA~Dの4ステップで理解します。

A.  スートラの種類

6種類あります。

B. スートラに含まれる言葉

サンディを切り、言葉の数も数えます。

C. 前のスートラから引っ張ってくる言葉

アヌヴリッティと呼ばれる、前のスートラで使われている言葉で、
今のスートラで繰り返し使われる言葉を引っ張ってきます。

D. スートラ全体の意味

スートラ自体の言葉と、アヌヴリッティの言葉を併せて、理解します。

E. スートラの応用

実際にスートラがどのような変化を起こすのか、例を見ます。


このサイトでは、この4ステップに沿って説明します。

6種類あるスートラの種類 

先に説明したスートラと呼ばれる形式の文献には、

6種類あると言われています。

それを述べたシュローカ(詩句)が以下です。

संज्ञा च परिभाषा च विधिर्नियम एव च  ।
अतिदेशोऽधिकारश्च षड्‍विधं सूत्रलक्षणम् ॥

saṃjñā ca paribhāṣā ca vidhirniyama eva ca  |
atideśo:'dhikāraśca ṣaḍ‍vidhaṃ sūtralakṣaṇam ||

スートラの種類は6種類


1.サンニャー(संज्ञा [saṃjñā])・スートラ


他のスートラで使われる特殊な用語の定義をするスートラ。

2.パリバーシャー(परिभाषा [paribhāṣā])・スートラ


他のスートラの解釈において、特殊な解釈が必要な時、それを提供するスートラ。

3.ヴィディ(विधिः [vidhiḥ])・スートラ


言葉に変化を起こすルールが言い表されているスートラ。

4.ニヤマ(नियमः [niyamaḥ])・スートラ


他のスートラの有効範囲を限定する為のスートラ。

5.アティデーシャ(अतिदेशः [atideśaḥ])・スートラ


他のスートラの有効範囲を拡張するためのスートラ。

6.アディカーラ(अधिकारः [adhikāraḥ])・スートラ


後ろに続く複数のスートラの主題を表すスートラ。

        ***

これで6種類です。

4000あるパーニニ・スートラも、6種類に分類出来ます。

あと、もう1種類付け足すとしたら、

7.ニシェーダ(निषेधः [niṣedhaḥ])・スートラ


他のスートラで言われた決まりについて、例外的に適用範囲外にある事項を述べたスートラ。


Q: 
4のニヤマと、7のニシェーダの違いは?

A: 
ニヤマは、「適用範囲はこれだけです。」という言い表し方で、

適用範囲外の項目は暗に理解される。

ニシェーダはその逆で、「これには適用されません」という言い表し方で、

適用範囲外の項目をそのまま述べている。

という違いです。


次回からは、それぞれのスートラの種類を例を挙げながら見て行きましょう。



スートラの定義

スートラ सूत्रम् [sūtram] とは、


ある知識を総括して伝える為の、短くまとめられた文章を指します。

サンスクリット語で「スートラ」 सूत्रम् [sūtram] とは、「糸」という意味の言葉です。
スートラ形式で伝えられた文献も、糸のように、複雑に絡み合って、一本をつまむと、他のスートラが沢山ついてくるのです。

サンスクリット語で伝えられている文献には、いろいろなスタイルがあります。
ある文献が、スートラ सूत्रम् [sūtram]と呼ばれるためには、以下の基準を満たしていなくてはなりません。

अल्पाक्षरमसंदिग्धं सारवद्विश्वतोमुखम् ।
अस्तोभमनवद्यं च सूत्रं सूत्रविदो विदुः ॥
alpākṣaramasaṃdigdhaṃ sāravadviśvatomukham |
astobhamanavadyaṃ ca sūtraṃ sūtravido viduḥ ||


ある文献が、スートラ सूत्रम् [sūtram]と呼ばれるたの、6つの条件


1.最短であること。अल्पाक्षरम् [alpākṣaram]

一昔前までは、全ては口伝で教え継がれていました。
辞書でも教科書でも、全部暗記していたのです。
ゆえに、短いと言う事はとても重要な事なのです。

2.疑いの余地がないこと。असंदिग्धम् [asaṃdigdham]

この意味かな?どの意味かな?こうも取れるね。ああも取れるね。
ではいけないのです。
スートラからは、はっきりした意味が取れなくてはなりません。

3.意義があること。 सारवत् [sāravat]

スートラの意味は、何かに変化を起こすなり、何かに名前を付けるなり、何かしら意義が無くてはなりません。

4.多方面で応用出来ること。 विश्वतोमुखम् [viśvatomukham]

スートラの意味は、普遍的な意味を持ち、マルチな場面で応用されなくてはなりません。

5.感嘆詞などは要らない。 अस्तोभम् [astobham]


6.間違いが無い。 अनवद्यम् [anavadyam]

スートラによって伝えられている内容は正しいはずで、後で理屈で覆されるような内容であってはなりません。

「~・スートラ」と名づけられた文献がインドには幾つかありますが、それら全てが上記の6つの条件を満たしているとは限りません。

ここで勉強している「パーニニ・スートラ」やヴェーダーンタ文献の「ブランマ・スートラ」は、これら6つの条件を満たしている、正真正銘の「スートラ文献」です。


>> 次は、スートラの種類を見てみましょう。>>