第一課 マーヘーシュワラ・スートラ

マヘーシュワラとは、シヴァのことです。
「マヘーシュワラから伝えられた」という意味で、「マーヘーシュワラ」になります。
ダマルを持ったシヴァ神が、パーニニの前に現れ、ダマルを14回鳴らしました。

パーニニがシヴァ神からスートラを受け取っている図。

その時の音が、以下のスートラになったのです。

1. अ इ उ ण्
2. ऋ ऌ क्
3. ए ओ ङ्
4. ऐ औ च्
5. ह य व र ट्
6. लँ ण्
7. ञ म ङ ण न म्
8. झ भ ञ्
9. घ ढ ध ष्
10. ज ब ग ड द श्
11. ख फ छ ठ थ च ट त व्
12. क प य्
13. श ष स र्
14. हल्
इति माहेश्वराणि सूत्राणि

1. a i u ṇ
2. ṛ l̥ k
3. e o ṅ
4. ai au c
5. ha ya va ra ṭ
6. lam̐ ṇ
7. ña ma ṅa ṇa na m
8. jha bha ñ
9. gha ḍha dha ṣ
10. ja ba ga ḍa da ś
11. kha pha cha ṭha tha ca ṭa ta v
12. ka pa y
13. śa ṣa sa r
14. hal
iti māheśvarāṇi sūtrāṇi

正しい発音を聞きながら、何回も声に出して、覚えましょう。




今回は、マーヘーシュワラ・スートラの意味、すなわち使い方を説明します。
使い方の裏にあるロジックは後の回できっちり説明いたします。

上のマーヘーシュワラ・スートラを、順番はそのままに、解かり易く段落をつけたのが以下の表です。
リシケシで勉強するサドゥーとブランマチャーリーの間で伝わるの方法です。
この方法をネット上で、リシケシの外の世界に発表するのは、おそらくこれが最初です。




マーヘーシュワラ・スートラは、音のグループを省略して表す為にあります。
この省略語のことを、प्रत्याहारः [pratyāhāraḥ] (プラッティヤーハーラ)と言います。


प्रत्याहारः [pratyāhāraḥ] (プラッティヤーハーラ)はこのように出来ています。

例えば、「अण्」というプラッティヤーハーラを見てみましょう。

  • 最初の音:अ
  • 最後の音:ण्

最後の音は、上の表の丸の中で示した音の内のどれかです。
丸の中で示した音を、इत् [it] と呼びます。
इत् [it] を日本語に訳してもあまり意味が無いので、そのまま「イット」と呼びましょう。

「अण्」というプラッティヤーハーラは、
  • 最初の音:अ から
  • 最後の音:ण् までにある、
音の全ての省略語なのです。
つまり、「अण्」というプラッティヤーハーラは、अ, इ, उ (ण्は数えない)という3つの音の省略語です。

同じように、
「अक्」というプラッティヤーハーラは、
  • 最初の音:अ から
  • 最後の音:क् までにある、
つまり、अ, इ, उ, ऋ, ऌ (ण् と क् は数えない)という5つの音の省略語です。
これら5つの音は、全て「simple vowel(単純母音)」です。
ゆえに、「simple vowels(単純母音)」と表現するかわりに、「अक्」と短く省略して、しかもより的確に表現できるのです。


もう一度表を見てください。


真ん中の列に、音の種類(Simple vowels,  Diphthongs ...)が示してあります。
Semi vowels(半母音)以降は、クラス5から1まで、降順になっています。
この順番を利用して、
例えば「झय्」と聞くと、
  • 最初の音:झ् は、クラス4
  • 最後の音:य् は、クラス1のइत् [it] 
ということから、即座に「クラス4~1の音」または「クラス1~4の音」と
答えられる訳です。

「Simple vowels」、「クラス1」などの音の仕分けについては、こちらを参照ください。


練習問題:
以下のप्रत्याहारः [pratyāhāraḥ] (プラッティヤーハーラ)に含まれる
  1. 音の数
  2. 音の種類
を答えなさい。

例題:अच्

一緒に考えましょう。
  1. 音の数
  • 表の各段には、5つ、例外的に4つの音が含まれています。確認してください。
  • 「अच्」の最初の音は、Simple vowelである「अ」なので、1段目のSimple vowelの段を参照すれば、すぐに見つかります。
  • 「अच्」の最後の音、すなわちइत् [it] は「च्」です。2段目にありますね。
  • つまり、「अच्」とは、1段目の最初の音から、2段目の最後までという事です。
  • 1段目には、5つの音があります。
  • 2段目には、4つの音があります。
  • 5+4=9
  • つまり、「अच्」に含まれている音の数は、9です。

 2. 音の種類
  • 表を見ると、1段目と2段目を合わせて、「Vowels」となっています。
  • すなわち、「अच्」に含まれている音の種類は「全ての母音」です。
    3. 音
  • 丸の中に示されているइत् [it] を除いて数えます。
  • すなわち、「अच्」に含まれている音は、「अ, इ, उ. ऋ. ऌ, ए, ओ, ऐ, औ」です。

問題:
अक्
अट्
इक्
इच्
एङ्
एच्
एङ्
ऐच्
खर्
चर्
जश्
झल्
झश्
यण्
हश्
हल्
अल्

お疲れ様でした。
マーヘーシュワラ・スートラの使い方の裏にあるロジックを、
次回のレッスンから見て行きます。

>> 第二課:イットとは >>

    2 件のコメント:

    1. 下記の疑問をお教え下さい。
      1.a,i,u,を表すṇと、lを表すṇが同じで混同はないのでしょうか?(a,i,uのみを表す場合と、a~lすべてを表す場合の区別は必要ないという事でしょうか。)

      2.「問題」の5番目と7番目が同じです。特別な意味があるのでしょうか。
      3.「問題」下から3番目は正しいですか。(hが最初に来た場合、halしかないのではないでしょうか。)

      蛇足:本日ようやく辻直四郎『サンスクリット文法』をなんとか読み終えたばかりの初心者・独学者です。パーニニ『八巻集』を読むのが長年の夢で(ちなみに現在67才です)、今日から取り掛かったのですが、とても歯が立たず、「パーニニ勉強会」という名称に引かれて読んでいる所です。
      お蔭でプラッティヤーハーラの事がよく分かり、大変に助かりました。
      上記の質問は、思い違いを含んだ愚問かも知れません。その節はお許し下さる様お願い致します。

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    2. 1.これが伝統の教えを必要とするトリックです。書くと長いので、下のリンクにあるサンスクリット語文法集中講義のマーヘーシュヴァラ・スートラの回をご覧ください。
      https://www.youtube.com/playlist?list=PLLxBjTc9MJ_jx255FWJJflo4I6TQy3oQP
      2.7番目は無駄に重複していますね。削除しておきます。
      3.ह् はふたつのスートラに表れます。14番目のスートラのहल्ではप्रत्याहारは作れません。ひとつめのह् 以降から始まり、ह्を含むप्रत्याहारで、ल्のइत्が使われます。

      パーニニ勉強会という名でブログを始めたものの、更新を殆どしていませんね。。
      オンライン、オフラインのクラスとして、ヴェーダーンタを学ぶ人を対象に、パーニニ・スートラを教えることは続けています。
      ご興味があればまたご連絡ください。

      祈りを込めて。。

      Medha

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